ぶちゅり

日々学んだ物理学に関することをメモしていきます。コメントでのご指摘お願いします。

【電磁気学】静電場に関するガウスの法則について

高校物理や初年度の大学物理の電磁気学で、よく電場に関するガウスの法則を用いて対称性のある系の電場を一瞬で求めるとことがあるかと思います。対称性がわかるとかなり強力ですね。例えば点電荷を球面で包んで考えると、「ガウスの法則と球対称性からE\cdot 4\pi r^2=\frac{q}{\epsilon_0}なので、\boldsymbol E=\frac{q}{4\pi\epsilon_0 r^2}\boldsymbol e_r」と言ったような回答が大多数だと思います。しかし、少しガバガバな回答だと思いませんか。もう少し丁寧な回答をこの記事で紹介します。

ベクトル'場'としてきちんと書く

最も基本的な例として点電荷の電場を求めましょう。まず、(積分された形での)電場に関するガウスの法則は、

\displaystyle\int_V  {\rm div}\boldsymbol{E}(\boldsymbol r) dV=\int_{\partial V} \boldsymbol{E}(\boldsymbol r)\cdot \boldsymbol n(\boldsymbol r) dS=\int_V  \frac{\rho}{\epsilon_0}dV

ですね。右辺は\frac{q}{\epsilon_0}になるのはよいかと思います。問題は左辺なのですが、それぞれを成分表示して求めることにします。3次元直線直交座標系を用いることもできますが、球だとわかっているので簡単に3次元極座標系を用いましょう。まず、電場は次の成分をもつと仮定します。

\boldsymbol E(\boldsymbol r)=E_r\boldsymbol e_r +E_\theta\boldsymbol e_\theta +E_\phi\boldsymbol e_\phi

次に法線ベクトル場\boldsymbol n(\boldsymbol r)ですが、自明に\boldsymbol e_rです。しかし次のように一般的な考え方を適用します。考えている曲面は2次元球面で、これはf(\boldsymbol r):=rとしたときに、f(\boldsymbol r)一定面と定義されます。したがって、その曲面に対する法線ベクトル場は、(\frac{\partial f}{\partial r}=\partial_r fなどと略記しています。)

\displaystyle\boldsymbol n(\boldsymbol r)=\frac{\partial_r f\boldsymbol e_r+\partial_\theta f\boldsymbol e_\theta+\partial_\phi f\boldsymbol e_\phi}{\sqrt{(\partial_r f)^2+\frac{1}{r^2}(\partial_\theta f)^2+\frac{1}{r^2\sin\theta}(\partial_\phi f)^2}}

 と定義されます。これを計算すると、(ゼロでないのが\partial_r fだけなので簡単ですね) \boldsymbol n(\boldsymbol r)=\boldsymbol e_rと求まります。よって、

\displaystyle\boldsymbol E(\boldsymbol r)\cdot\boldsymbol n(\boldsymbol r)=E_r

となります。電場に関するガウスの法則から

\displaystyle\int_0^{2\pi}\int_0^\pi E_r r^2\sin\theta d\theta d\phi=\frac{q}{\epsilon_0}

で、ここで問題なのですが、E_r\theta\phiに依らないことはどのようにして導けるのでしょうか。未だ検討中なので分かり次第加筆します。この仮定をおけば(球対称性)E_r=\frac{q}{4\pi\epsilon_0 r^2}ですね。したがって、

\displaystyle\boldsymbol E(\boldsymbol r)=\frac{q}{4\pi\epsilon_0 r^2}\boldsymbol e_r+E_\theta\boldsymbol e_\theta +E_\phi\boldsymbol e_\phi

となります。あれ、これだけではE_\thetaE_\phiまでは求まりませんね。

 

実はガウスの法則だけではなかった

実は、純粋に電場に関するガウスの法則のみからではその曲面に垂直な方向の成分の情報しか得ることができません。もう一つ必要な式が静電場に渦がないという式{\rm rot}\boldsymbol E(\boldsymbol r)=\boldsymbol 0です。(もう少し進んだ単元から見ると、マクスウェル方程式のひとつであるファラデー-マクスウェルの法則{\rm rot}\boldsymbol E(\boldsymbol r,t)=-\frac{\partial}{\partial t}\boldsymbol B(\boldsymbol r,t)で右辺が\boldsymbol 0のときですね。) この渦なしの条件は極座標系では、

\displaystyle{\rm rot}\boldsymbol E(\boldsymbol r)=\frac{1}{r\sin\theta}\left\{\partial_\theta(E_\phi\sin\theta)-\partial_\phi E_\theta\right\}\boldsymbol e_r

\displaystyle+ \frac{1}{r}\left\{\frac{1}{\sin\theta}\partial_\phi E_r-\partial_r(rE_\phi)\right\}\boldsymbol e_\theta + \frac{1}{r}\left\{\partial_r(rE_\theta)-\partial_\theta E_r\right\}\boldsymbol e_\phi=\boldsymbol 0

となります。したがって、各成分=0となります。まず、第二項は \frac{1}{\sin\theta}\partial_\phi E_r=\partial_r(rE_\phi)ですが、E_r\theta\phiに依存していないのでそれらでの偏微分は0となります。したがって、E_\phirに依らないとすれば(ここも検討中です。何から導くことができるのでしょうか)

\displaystyle\partial_r(rE_\phi)=E_\phi=0

 を得ます。次に第三項は\partial_r(rE_\theta)=\partial_\theta E_rですが、これも同様にして、E_\thetarに依らないとすれば

\displaystyle\partial_r(rE_\theta)=E_\theta=0

を得ます。このようにして、やっと電場のすべての成分を求めることができました。

\displaystyle\boldsymbol E(\boldsymbol r)=\frac{q}{4\pi\epsilon_0 r^2}\boldsymbol e_r

 

対称性

対称性からくる条件は何から求めることができるのでしょうか。{\rm div}\boldsymbol E=\frac{\rho}{\epsilon},{\rm rot}\boldsymbol E=\boldsymbol 0を素朴にある座標で開いて、連立の偏微分方程式から対称性の条件を求めることができるでしょうか。静電ポテンシャル\phiからポアソン方程式と解くというのでもいいといえばいいのですが、上の2式のみからは原理的に求めることができるのでしょうか...