ぶちゅり

日々学んだ物理学に関することをメモしていきます。コメントでのご指摘お願いします。

【一般相対性理論】時空のADM分解

相対論においては時空は時間も空間も平等にして扱っています。しかし、時間一定面で時空を分割していき、時間発展を追うこともできます。これは相対論を正準形式で記述しようと思うと必要となることです。このように、D次元時空\mathcal MD-1次元時間一定面\Sigma_tで分解することをアーノウィット-デザー-マイスナー*1(ADM)分解といいます。

時間一定面

時空\mathcal Mの時間tが一定である超曲面を\Sigma_tとします。

\displaystyle \mathcal M=\bigcup_t \Sigma_t

t\not=t'\Rightarrow \Sigma_t \bigcap \Sigma_{t'}=\varnothing

\Sigma_tD-1次元の部分多様体とみて、この\Sigma_t上の計量を定めることができます。\Sigma_tに座標(y^i)(i=1,\cdots,D-1)を貼り、この座標での計量を\gamma_{ij}dy^i\otimes dy^jとします。この\gamma_{ij}\mathcal M上に張り付けた座標(x^\mu)での計量成分g_{\mu\nu}の空間成分とは一般には異なるのですが、今は時間一定面であり、y^i=x^iとすると一致します。e^\mu_i:=\frac{\partial x^\mu}{\partial x^i}とすると、\gamma_{ij}=e^\mu_i e^\nu_j g_{\mu\nu}と書けます。

 

計量のADM分解

ベクトル場は超曲面に直交する成分と超曲面上の成分に分解することができますね。\Sigma_t\Sigma_{t+dt}の点を結ぶ世界間隔ds^2(時間的または空間的)を考えてみます。\Sigma_tの法線ベクトル場を\boldsymbol n=n^\mu\frac{\partial}{\partial x^\mu}とし、符号を\epsilon(\boldsymbol n)=g_{\mu\nu}n^\mu n^\nu=\pm 1とします。すると、世界間隔の\Sigma_t上の端点から法線ベクトル場に平行に\Sigma_{t+dt}まで関数倍できます。その関数をラプス関数Nといいます。今度は、世界間隔を\Sigma_t上に射影すると、その射影された成分はある\Sigma_t上のベクトル場\boldsymbol N=N^i \frac{\partial}{\partial x^i}を用いて、\gamma_{ij}(dx^i+N^idt)(dx^j+N^jdt)と計量されます。このベクトル場をシフトベクトル\boldsymbol Nといいます。そうすると、\mathcal M上の世界間隔としては次のように計量されます。

ds^2=g_{\mu\nu}(Nn^\mu dt)(Nn^\nu dt)+\gamma_{ij}(dx^i+N^idt)(dx^j+N^jdt)

=\epsilon(\boldsymbol n)N^2dt^2+\gamma_{ij}(dx^i+N^idt)(dx^j+N^jdt)

そうすると、計量は次のようになっていることがわかるかと思います。

g_{00}=\epsilon(\boldsymbol n)N^2+N_j N^j

g_{0i}=N_i

g_{ij}=\gamma_{ij}

逆行列は簡単に系計算できて、g={\rm det}(g_{\mu\nu})=\frac{\epsilon(\boldsymbol n)}{N^2}であって

\displaystyle g^{00}=\frac{1}{g}

\displaystyle g^{0i}=-\frac{1}{g}N^i

\displaystyle g^{ij}=\frac{1}{g}(\epsilon(\boldsymbol n)\gamma^{ij}+N^i N^j)

となります。このように計量などを分解することをADM分解といいます。

*1:マイスナー効果で知られるマイスナーさんとは異なります。