ぶちゅり

日々学んだ物理学に関することをメモしていきます。コメントでのご指摘お願いします。

【微分幾何】多様体の計量/接続/測地線/曲率

多様体ではスカラーだったりベクトルだったりテンソルを考えましたが、これらを利用することで多様体多様体自体を自分自身で、内在的に計る(測る)ことができます。そのために計量テンソルというものがまず重要になってきます。

\newcommand{\bm}{\boldsymbol}

計量テンソル

次のような2つの条件1.対称, 2.非退化の条件をもつ2階共変テンソル\bm g \in \mathcal T_2(M)を考えます。
1.\forall \bm v, \bm w \in V(M), \bm g(\bm v,\bm w)=\bm g(\bm w,\bm v)
2.\forall \bm v \in V(M), \bm g(\bm v,\bm w)=0 \Longrightarrow \bm w =\bm 0
このような2階共変テンソル\bm gを擬リーマン計量といい、多様体との組(M,\bm g)を擬リーマン多様体といいます。(擬リーマン計量では\bm g(\bm v,\bm v)<0と負になり得ます。) 非負という条件を課したものはリーマン計量といい、組(M,\bm g)をリーマン多様体といいます。擬リーマン多様体において、反変ベクトル場のノルムを||\bm v||:=\sqrt{|\bm g(\bm v,\bm v)|}で定義します。リーマン多様体では||\bm v||:=\sqrt{\bm g(\bm v,\bm v)}で定義できます。

正規直交化

いま、反変ベクトル場の基底を勝手に取ってきます。すると、
\bm g\left(\frac{\partial}{\partial x^\lambda},\frac{\partial}{\partial x^\kappa}\right)=g_{\mu\nu}dx^\mu\otimes dx^\nu\left(\frac{\partial}{\partial x^\lambda},\frac{\partial}{\partial x^\kappa}\right)=g_{\mu\nu}\delta^\mu_\lambda \delta^\nu_\kappa=g_{\lambda\kappa}
ですが、各p\in M周りUの座標変換\phi'\circ\phi^{-1}:\phi(p)=(x^1,...,x^m)\mapsto\phi'(p)=(x'^1,...,x'^m)次のように与えます。
\mu=1:
\left(\frac{\partial}{\partial x'^1}\right)_{p}:=\left|\left|\left(\frac{\partial}{\partial x^1}\right)_{p}\right|\right|^{-1}\left(\frac{\partial}{\partial x^1}\right)_{p}
2\leq\mu\leq m:
\left(\frac{\partial}{\partial \widetilde{x}^\mu}\right)_{p}:=\left(\frac{\partial}{\partial x^\mu}\right)_{p}-\sum_{\nu=1}^{\mu-1}\bm g_p\left(\left(\frac{\partial}{\partial x^\mu}\right)_{p},\left(\frac{\partial}{\partial x'^\nu}\right)_{p}\right)\bm g_p\left(\left(\frac{\partial}{\partial x'^\nu}\right)_{p},\left(\frac{\partial}{\partial x'^\nu}\right)_{p}\right)\left(\frac{\partial}{\partial x'^\nu}\right)_{p}
\left(\frac{\partial}{\partial x'^\mu}\right)_{p}:=\left|\left|\left(\frac{\partial}{\partial \widetilde{x}^\mu}\right)_{p}\right|\right|^{-1}\left(\frac{\partial}{\partial \widetilde{x}^\mu}\right)_{p}
というような操作を繰り返すことによって座標変換をすると、
\bm g_p\left(\left(\frac{\partial}{\partial x'^\lambda}\right)_{p},\left(\frac{\partial}{\partial x'^\kappa}\right)_{p}\right)=\pm\delta_{\lambda\kappa}
とすることができます(シュミットの正規直交化法)。このようにした基底\left(\frac{\partial}{\partial x'^\mu}\right)_{p}を点pにおける正規直交基底といいます。このときの+1-1の数(符号数)は座標に依りません(シルベスターの慣性法則)。 +1の数をp,-1の数をqとすると、符号数は(p,q)のようにして表します。m次元擬リーマン多様体のうち符号数が(m-1,1)または(1,m-1)のものを特にローレンツ多様体といいます。相対論で扱う時空間は(4次元の)ローレンツ多様体です。

逆計量テンソル

計量テンソルのスロットにひとつだけ反変ベクトル場をいれることを考えます。
\bm g(\bm v):=\bm g(\bm v,)=\bm g(,\bm v)=g_{\mu\nu}\delta^\nu_\lambda v^\lambda dx^\mu=g_{\mu\nu}v^\nu dx^\mu:=v_\mu dx^\mu
するとこれは1階の共変テンソルとしてみることができます。さらにあるテンソル\bm t=\bm t_1\otimes\bm v\otimes\bm t_2のように書けているとき、\bm vに作用させると約束したうえで、いわゆる添え字の下げに対応する写像\bm g_{\bm v}:\mathcal T^r_s(M)\rightarrow \mathcal T^{r-1}_{s+1}(M)
\bm g_{\bm v}(\bm t):=\bm t_1\otimes\bm g(\bm v)\otimes \bm t_2=v_\mu \bm t_1\otimes dx^\mu \otimes \bm t_2
も考えることもできます。つまり、計量テンソルのスロットをひとつだけ用いると、反変ベクトル場から共変ベクトル場をユニークに生成するものとみることができます。これに対して、逆に共変ベクトル場から反変ベクトル場をユニークに生成する非退化対称2階反変テンソル\bm g^{-1}\in\mathcal  T^2(M)を次のように定義し、逆計量テンソルといいます。(計量テンソルの非退化性から逆計量テンソルが存在します。)
\bm g^{-1}(\bm g(\bm v)):=\bm g^{-1}(\bm g(\bm v),)=\bm g^{-1}(,\bm g(\bm v)):=\bm v
(g^{-1})^{\mu\nu}\delta^\lambda_\nu g_{\lambda\kappa}v^{\kappa}\frac{\partial}{\partial x^\mu}=(g^{-1})^{\mu\nu}g_{\nu\kappa}v^\kappa\frac{\partial}{\partial x^\mu}:=v^\mu\frac{\partial}{\partial x^\mu}
すなわち、
(g^{-1})^{\mu\nu}g_{\nu\kappa}:=\delta^\mu_\kappa
あるいは先ほどの記号の定義によって、
(g^{-1})^{\mu\nu}v_\nu:=v^\mu
とみることもできます。このように成分では計量テンソルと逆計量テンソルは添え字の上げ下げを行っているようにみることができます。(しかし重要なのはそこではなく元の定義です。)また、逆計量テンソルの成分を簡単に次のように書くこととします。
(g^{-1})^{\mu\nu}=g^{\mu\nu}

多様体上の曲線の長さと最短距離線方程式

擬リーマン多様体に曲線x:[t_1,t_2]\ni t\mapsto x(t)\in Mが与えられると、速度ベクトル(曲線に沿って定義される反変ベクトル)\bm v_{x(t)}=\frac{dx}{dt}=\left(\frac{dx^\mu(t)}{dt}\right)_{x(t)}\left(\frac{\partial}{\partial x^\mu}\right)_{x(t)}\in \mathcal V_{x(t)}(M)が定義でき、点x(t)における速度ベクトルのノルムすなわちある点での速さが||\bm v_{x(t)}||で与えられます。つまり、速度ベクトルのノルムを各点で考えるとこれは速さの拡張になっています。したがって、速さをパラメータt積分することによって多様体上の曲線xの長さL_xが次のように定義できます。ただし、次の積分は通常の意味の積分です。
L_x:=\int_{t_1}^{t_2} \left|\left|\bm v_{x(t)}\right|\right|dt=\int_{t_1}^{t_2} \left|\left|\frac{dx}{dt}\right|\right|dt=\int_{t_1}^{t_2} \sqrt{\left|\bm g_{x(t)}\left(\frac{dx}{dt},\frac{dx}{dt}\right)\right|}dt
局所座標表示すれば
=\int_{t_1}^{t_2} \sqrt{\left|(g_{\mu\nu})_{x(t)}(v^\mu)_{x(t)} (v^\nu)_{x(t)}\right|}dt=\int_{t_1}^{t_2} \sqrt{\left|(g_{\mu\nu})_{x(t)}\left(\frac{dx^\mu(t)}{dt}\right)_{x(t)} \left(\frac{dx^\nu(t)}{dt}\right)_{x(t)}\right|}dt
となります。次に、多様体に2点p,q\in Mが与えられたときに、この2点を結ぶような曲線xが与える長さL_xが最小となるような条件を求めます。これは、変分法すなわちL_cを作用として\delta L_x=0とすればよいですね。この手順(具体的な計算は講談社基礎物理学シリーズ相対性理論{\rm p}.128などを参照)によって次のような方程式が得られます。
\left(g_{\mu\nu}\right)_{x(t)}\left(\frac{d^2x^\nu(t)}{dt^2}\right)_{x(t)}+\left( [\nu\lambda,\mu ]\right)_{x(t)}\left(\frac{dx^\nu(t)}{dt}\right)_{x(t)}\left(\frac{dx^\lambda(t)}{dt}\right)_{x(t)}=0
\left([\nu\lambda,\mu]\right)_{x(t)}:=\frac{1}{2}\left(\left(\frac{\partial\left(g_{\mu\nu}\right)_{x(t)}}{\partial x^\lambda}\right)_{x(t)}+\left(\frac{\partial \left(g_{\mu\lambda}\right)_{x(t)}}{\partial x^\nu}\right)_{x(t)}-\left(\frac{\partial \left(g_{\lambda\nu}\right)_{x(t)}}{\partial x^\mu}\right)_{x(t)}\right)
=\left([\lambda\nu,\mu]\right)_{x(t)}
これは多様体上の任意の2点間を結ぶ曲線のうちその長さが最小となるもの、つまり多様体上の一般的な直線のようなものを与える微分方程式です。測地線方程式ではないです。\left([\nu\lambda,\mu]\right)_{x(t)}を第一種クリストッフェル記号といいます。この左辺は共変ベクトルの成分になっていて、これを成分とする共変ベクトルに逆計量テンソルg^{\mu\kappa}\frac{\partial}{\partial x^\mu}\frac{\partial}{\partial x^\kappa}を作用させれば、成分として方程式は
\left(\frac{d^2x^\kappa(t)}{dt^2}\right)_{x(t)}+\left(\left\{\begin{aligned}\kappa\hspace{3pt}\\ \nu\lambda\end{aligned}\right\}\right)_{x(t)}\left(\frac{dx^\nu(t)}{dt}\right)_{x(t)}\left(\frac{dx^\lambda(t)}{dt}\right)_{x(t)}=0
\left(\left\{\begin{aligned}\kappa\hspace{3pt}\\ \nu\lambda\end{aligned}\right\}\right)_{x(t)}:=\left(g^{\mu\kappa}\right)_{x(t)}\left([\nu\lambda,\mu]\right)_{x(t)}=\left(\left\{\begin{aligned}\kappa\hspace{3pt}\\ \lambda\nu\end{aligned}\right\}\right)_{x(t)}
となります。\left(\left\{\kappa,\nu\lambda\right\}\right)_{x(t)}を第二種クリストッフェルの記号といいます。この方程式から、関数x^\mu:t\mapsto x^\mu(t)が求まり、x(t)=\phi^{-1}(x^1(t),...,x^m(t))の具体的な形が求まるということになります。

微分幾何学的な操作や量

一般に、多様体では平坦なユークリッド空間とは違って歪んでいる部分を含むのでユークリッド空間で扱ってきたベクトル場の方向微分などはそのままでは扱えません。多様体論の基本の目的として、座標に依らないようにして拡張していかなければならないです。またその歪み具合を表すような量も定義しておくと便利です。これは座標に依っては困るので(0階,1階,高階であれ)テンソルであらわされるとよいということになります。

アファイン接続と共変微分、測地線方程式

多様体の反変ベクトル場の二項演算のアファイン(アフィン)接続\nabla:V(M)\times V(M)\ni(\bm v,\bm w)\mapsto \nabla_{\bm v} \bm w\in V(M)を次の条件で定義します。
1. \nabla_{\bm v_1+\bm v_2}(\bm w)=\nabla_{\bm v_1}(\bm w)+\nabla_{\bm v_2}(\bm w)
2. \nabla_{\bm v}(\bm w_1+\bm w_2)=\nabla_{\bm v}(\bm w_1)+\nabla_{\bm v}(\bm w_2)
3. \nabla_{f\bm v}\bm w=f\nabla_{\bm v}\bm w
4. \nabla_{\bm v}f\bm w=(\bm v f)\bm w +f\nabla_{\bm v}\bm w
これにしたがって局所座標表示すると、
\nabla_{\bm v} \bm w=\nabla_{v^\mu \frac{\partial}{\partial x^\mu}}w^\nu \frac{\partial}{\partial x^\nu}
=v^\mu \nabla_{\frac{\partial}{\partial x^\mu}}w^\nu\frac{\partial}{\partial x^\nu}
=v^\mu \left(\frac{\partial w^\lambda}{\partial x^\mu}\frac{\partial}{\partial x^\lambda}+w^\nu\nabla_{\frac{\partial}{\partial x^\mu}}\frac{\partial}{\partial x^\nu}\right)
ここで、これは反変ベクトル場なので、基底に対するある係数(スカラー場/関数)\Gamma^\lambda_{\mu\nu}が存在して、\nabla_{\frac{\partial}{\partial x^\mu}}\frac{\partial}{\partial x^\nu}=\Gamma^\lambda_{\mu\nu}\frac{\partial}{\partial x^\lambda}と書けるので、
\nabla_{\bm v} \bm w=v^\mu \left(\frac{\partial w^\lambda}{\partial x^\mu}+\Gamma^\lambda_{\mu\nu}w^\nu\right)\frac{\partial}{\partial x^\lambda}
となります。\nabla_{\bm v}\bm w\bm vによる\bm wの共変微分といいます。また、\Gamma^\lambda_{\mu\nu}を接続係数といいます。この定義だけでは接続係数に一意性はないです。接続係数は局所座標ごとのなんらかの関数です。共変微分は通常のベクトル場の方向微分の一般化になっています。ユークリッド空間では各点pに定まる反変ベクトルの属する空間は同じであるから異なる点同士のベクトル和を自然に考えることができました。そこから差を考えることができて、方向微分が自然に定義できました。しかし、一般の多様体の場合には各点に定まっているベクトル空間が異なっているために異なる点同士のベクトル和は定められていないです。(同じ点同士はできるので、一挙にすべての点でやってしまおうというアイデアがベクトル場であったのです。) 異なる点でベクトル和が考えられないということは、通常のベクトルの微分はそのままでは考えられないということになりますが、通常のベクトル場の方向微分の性質である線形性やライプニッツ則を抽出して一般化して定義することで、この問題をクリアしています。(距離空間から位相空間への拡張に似ていますね。)共変微分というものは、座標に依らずに、あるベクトルのもつ方向性により他のベクトルの変化を見ることができます。実際に\bm vがある曲線x上でxによって定義されているとします。すなわち、速度ベクトル\bm v_{x(t)}=\frac{dx}{dt}=\left(\frac{dx^\mu(t)}{dt}\right)_{x(t)}\left(\frac{\partial}{\partial x^\mu}\right)_{x(t)}となっているとします。[tex:\bm wは少なくともこの曲線x上で定義されているとして、共変微分を用いると、xに沿って\bm wがどの程度変化しているのか、1次の精度(線形性とライプニッツ則に起因する)で測ることができます。特に、\nabla_{\bm v} \bm w=\bm 0という状況では\bm wxに沿って大きさと方向が変わっていないということを示しています。よってこれをもって多様体上のベクトルの平行移動と定義すればよいです。具体的に書けば、
\nabla_{\bm v} \bm w=\frac{dx^\mu(t)}{dt} \left(\frac{\partial w^\lambda}{\partial x^\mu}+\Gamma^\lambda_{\mu\nu}w^\nu\right)\frac{\partial}{\partial x^\lambda}=\bm 0
すなわち、
\frac{dx^\mu(t)}{dt}\frac{\partial w^\lambda}{\partial x^\mu}+\Gamma^\lambda_{\mu\nu}\frac{dx^\mu(t)}{dt}w^\nu=0
\frac{dw^\lambda(t)}{dt}+\Gamma^\lambda_{\mu\nu}\frac{dx^\mu(t)}{dt}w^\nu=0
直線直交座標では平行移動であれば当然\frac{\partial w^\lambda}{\partial x^\mu}=0であるから\Gamma^\lambda_{\mu\nu}=0です。一方、曲線座標では\frac{\partial w^\lambda}{\partial x^\mu}\not=0となって\Gamma^\lambda_{\mu\nu}\not=0です。\Gamma^\lambda_{\mu\nu}はその局所座標の「歪み」に起因するベクトルの変化を直線直交座標の方と整合性を保つように打ち消すような量であるとみることができますし、異なるベクトル空間を比較できるようにベクトル空間をまさに「接続」しているとみることもできます。見方を変えれば設定した\Gamma^\lambda_{\mu\nu}がベクトルの変化具合ないし異なるベクトル空間の比較規則を決めているとみることもできます。(ただし、次に定義するように、特殊な条件下では\Gamma^\lambda_{\mu\nu}が一意的に定まるのでこの見方はあまりしないです。)注意すべきことは、平坦なユークリッド空間であっても曲線座標を貼れば\Gamma^\lambda_{\mu\nu}\not=0であるし、歪んだ多様体であっても局所直線直交座標を貼れば\Gamma^\lambda_{\mu\nu}=0となるのです。つまり、\Gamma^\lambda_{\mu\nu}多様体そのものの真の歪み具合を表せるような量ではないということです。あくまで、座標の歪み具合しか表せないのです。

アファイン接続は共変ベクトル場に対しても同様に定義できます。\nabla:V(M)\times V^*(M)\rightarrow V^*(M)、接続係数は\nabla_{\frac{\partial}{\partial x^\mu}}dx^\nu=-\Gamma^\nu_{\mu\lambda} dx^\lambdaで与えられます。より一般に、テンソル場に対しては次のように定義されます。\nabla:V(M)\times T^r_s(M)\rightarrow V^r_s(M)また、テンソル場に対する共変微分は次で与えます。
\nabla_{\bm v}(\bm t_1\otimes\bm t_2)=(\nabla_{\bm v}\bm t_1)\otimes\bm t_2 + \bm t_1\otimes(\nabla_{\bm v}\bm t_2)
これを繰り返してベクトルにまで分解すればよいです。また、反変ベクトルの基底や基底による共変微分は次のような略記号がよく用いられます。
\frac{\partial}{\partial x^\mu}=\partial_\mu
\nabla_{\frac{\partial}{\partial x^\mu}}=\nabla_\mu

レビ-チビタ接続

曲線xの速度ベクトルが曲線xに沿って変わらない、すなわち\nabla_{\bm v}\bm v=\bm 0であるとします。この曲線[tex:]を測地線といいます。\nabla_{\bm v}\bm v=\bm 0を局所座標表示すればただちに、
\frac{dv^\lambda(t)}{dt}+\Gamma^\lambda_{\mu\nu}\frac{dx^\mu(t)}{dt}v^\nu=0
\frac{d^2x^\lambda(t)}{dt^2}+\Gamma^\lambda_{\mu\nu}\frac{dx^\mu(t)}{dt}\frac{dx^\nu(t)}{dt}=0
を得ます。これを測地線方程式といいます。測地線は、もし計量テンソルが存在して、この曲線に沿って変わらない\nabla_{\bm v}\bm g=\bm 0ときにはこの曲線に沿って速度ベクトルのノルムを保つことができるということであるから最短距離線に一致しま。よって最短距離線方程式と比較して、接続係数が第二種クリストッフェル記号で与えられるということがわかります。これが多様体の各点の速度ベクトルで成り立つときの接続係数をレビ-チビタ(リーマン)接続といいます。すなわち、
\Gamma^\lambda_{\mu\nu}=\left\{\begin{aligned}\lambda\hspace{3pt}\\ \mu\nu\end{aligned}\right\}
ここから、レビ-チビタ接続は下の添字について対称性をもつ、
\Gamma^\lambda_{\mu\nu}=\Gamma^\lambda_{\nu\nu}
ということがわかります。これは捩れがないということですが、これについては省略します(通常の一般相対論では重要ではないです)。

曲率テンソル

多様体が歪んでいれば、反変ベクトルを2つ反変ベクトル場に沿って平行移動させると、どちらのベクトル場に沿って先に平行移動させるかという2通りの平行移動の方法で、平行移動させた結果は一致しえないですね。例えばレビ-チビタ接続を考えるものとすると、この場合には、平行移動先では、ノルムは保存されるものの、向きが異なります。つまり、平行移動という操作が一般に非可換であるということになります。これは、平行移動そのものを定義する共変微分が一般に非可換であるということになります。よって、2階共変微分の順序交換の差が多様体の歪み具合を表す量になり得ます。次の写像\bm R':(\bm v_1,\bm v_2, \bm w)\rightarrow \bm R'(\bm v_1,\bm v_2,\bm w)を考えます。
\bm R'(\bm v_1,\bm v_2,\bm w):=\nabla_{\bm v_1}(\nabla_{\bm v_2}\bm w)-\nabla_{\bm v_2}(\nabla_{\bm v_1}\bm w)
このような歪み具合を表す量として、\bm R'テンソル場であることが要請されますが、
\bm R'(f\bm v_1,\bm v_2,\bm w)=\nabla_{f\bm v_1}(\nabla_{\bm v_2}\bm w)-\nabla_{\bm v_2}(\nabla_{f\bm v_1}\bm w)
=f\nabla_{\bm v_1}(\nabla_{\bm v_2}\bm w)-\nabla_{\bm v_2}(f\nabla_{\bm v_1}\bm w)
=f\nabla_{\bm v_1}(\nabla_{\bm v_2}\bm w)-f\nabla_{\bm v_2}(\nabla_{\bm v_1}\bm w)-(\bm v_2 f)(\nabla_{\bm v_1}\bm w)
=f\bm R'(\bm v_1,\bm v_2,\bm w)-(\bm v_2 f)(\nabla_{\bm v_1}\bm w) \not=f\bm R'(\bm v_1,\bm v_2,\bm w)
\bm v_2,\bm wについても同様で、テンソル場になっていません。この修正項として-\nabla_{[\bm v_1,\bm v_2]}\bm wを加えるとうまくテンソル場になります。([\bm v_1,\bm v_2]f=\bm v_1(\bm v_2 f)-\bm v_2(\bm v_1 f)というベクトル場です。局所座標表示をすれば、これがベクトル場であることはただちに示すことができます。) よって、\bm R:(\bm v_1,\bm v_2, \bm w)\rightarrow \bm R(\bm v_1,\bm v_2,\bm w)=\nabla_{\bm v_1}(\nabla_{\bm v_2}\bm w)-\nabla_{\bm v_2}(\nabla_{\bm v_1}\bm w)-\nabla_{[\bm v_1,\bm v_2]}\bm wで定める4階混合テンソル\bm Rを歪み具合を表す量とすることができます。(スロットを3つ使っています。) これを(リーマン)曲率テンソルといいます。実際、
\bm R(f\bm v_1,\bm v_2,\bm w)=f\bm R'(\bm v_1,\bm v_2,\bm w)-(\bm v_2 f)(\nabla_{\bm v_1}\bm w)-\nabla_{[f\bm v_1,\bm v_2]}\bm w
=f\bm R'(\bm v_1,\bm v_2,\bm w)-(\bm v_2 f)(\nabla_{\bm v_1}\bm w)-\nabla_{f[\bm v_1,\bm v_2]-(\bm v_2f)\bm v_1}\bm w
=f\bm R'(\bm v_1,\bm v_2,\bm w)-(\bm v_2 f)(\nabla_{\bm v_1}\bm w)+\nabla_{(\bm v_2f)\bm v_1}\bm w- \nabla_{f[\bm v_1,\bm v_2]}\bm w
=f\bm R'(\bm v_1,\bm v_2,\bm w)-(\bm v_2 f)(\nabla_{\bm v_1}\bm w)+(\bm v_2f)\nabla_{\bm v_1}\bm w- f\nabla_{[\bm v_1,\bm v_2]}\bm w
=f\bm R'(\bm v_1,\bm v_2,\bm w)- f\nabla_{[\bm v_1,\bm v_2]}\bm w
=f\bm R(\bm v_1,\bm v_2,\bm w)
などのように打ち消し合います(その他のスロットはご自分で計算してみてください)。\bm R(\bm v_1,\bm v_2,\bm w)を局所座標表示すると、
\bm R(\bm v_1,\bm v_2,\bm w)=v_1^\mu v_2^\nu\left(\frac{\partial \Gamma^\lambda_{\nu\eta}}{\partial x^\mu}-\frac{\partial \Gamma^\lambda_{\mu\eta}}{\partial x^\eta}+\Gamma^\lambda_{\mu\kappa} \Gamma^\kappa_{\nu\eta}-\Gamma^\lambda_{\nu\kappa} \Gamma^\kappa_{\mu\eta}\right)w^\eta \frac{\partial}{\partial x^\lambda}=:v_1^\mu v_2^\nu R^\lambda_{\mu\nu\eta} w^\eta \frac{\partial}{\partial x^\lambda}
なので、
\bm R=R^\kappa_{\mu\nu\lambda}\frac{\partial}{\partial x^\kappa}\otimes dx^\mu\otimes dx^\nu \otimes dx^\lambda
とかくとすると、さきほどまで後ろ3つのスロットを使っていたということになります。これに対して添え字の上げ下げや縮約という操作(いわゆる添字について足し上げる)をすると4階共変テンソル場や2階共変テンソル場、0階テンソル場(スカラー場)をつくることもできます。4階共変テンソル場は、1つ目に計量テンソルを作用させると約束して(\bm gの下付きの数字は何番目のスロットに作用させるかを約束しています。)
\bm g_1(\bm R)=g_{\kappa\eta} R^\eta_{\mu\nu\lambda}dx^\kappa \otimes dx^\mu\otimes dx^\nu \otimes dx^\lambda
=R_{\kappa\mu\nu\lambda}dx^\kappa \otimes dx^\mu\otimes dx^\nu \otimes dx^\lambda
2階共変テンソル場は、曲率テンソルの1つ目の反変ベクトル場と2つ目共変ベクトル場を縮約することで定義され、
C^1_2\left(R^\kappa_{\mu\nu\lambda}\frac{\partial}{\partial x^\kappa}\otimes dx^\mu\otimes dx^\nu \otimes dx^\lambda\right)=R^\kappa_{\mu\nu\lambda}\delta^\nu_\kappa dx^\mu\otimes dx^\lambda
=R^\kappa_{\mu\kappa\lambda} dx^\mu\otimes dx^\lambda
=R^\lambda_{\mu\lambda\nu} dx^\mu\otimes dx^\nu=:R_{\mu\nu}dx^\mu\otimes dx^\nu=:\bm R_{\rm Ricci}
となり、\bm R_{\rm Ricci}をリッチ曲率テンソルといいます。スカラー場は、添え字を上げたリッチ曲率テンソルをさらに縮約し、
\bm g_1^{-1}(\bm R_{\rm Ricci})=g^{\mu\lambda}R_{\lambda\nu} \frac{\partial}{\partial x^\mu}\otimes dx^\nu
=:R^\mu_\nu \frac{\partial}{\partial x^\mu}\otimes dx^\nu
C^1_1(\bm g^{-1}_1(\bm R_{\rm Ricci}))=R^\mu_\nu \delta^\nu_\mu
=R^\mu_\mu=:R
となります。Rをリッチ曲率スカラーといいます。このようにして座標に依らないという強い性質をもつ(4,2,0階などの)テンソル場によって多様体の歪み具合を表すことができます。リッチ曲率スカラーの符号によって多様体の歪み方をある程度分類することができます。