この記事は参考文献[1]を大いに参考にしました。重力もゲージ論的に捉えることができて、ゲージ理論を拡張することで考えることができます。ゲージ変換として、一般座標変換で考えたものが重力のゲージ理論になります。(スピノル場はこの方法では扱えません。)
重力と対称性
重力場を得るときに特に他と違って特別な点というのが、ゲージ変換が座標の変換によってもたらされることです。として、
という座標変換によって、諸量が変分を受けます。電磁場の場合は場の位相変換、つまりの不定性を利用したゲージ変換でしたが、重力場の場合は、どのような座標系をとっても、真な物理法則は変わらないという不定性を利用したゲージ変換ということになります。では、この一般座標変換でなにが変わるかというと、ゲージ場としてのベクトル場、ゲージ場の強さとしてのテンソル場、ヒッグス場としての複素スカラー場など、これらが各々の変換性に伴って変換するわけです。*1
電磁場との相互作用がある複素スカラー場を例に
具体例がよくわかってないのですが、電磁場との相互作用がある複素スカラー場とかを例にして良いのでしょうか()、複素スカラー場のラグランジアン密度は
としてKlein-Gordon方程式が得られます。作用は大域的な座標変換に対する対称性をもちます。
一般座標変換対称性
計算を簡単にするため、無限小変換で考えます。連続的な変換なのであとで積分すれば有限の場合を再現できるので、これでも本質が尽きます。
というように、16個の連続無限小パラメータをとります。すると、
です。
局所対称性の回復
ゲージ原理に従って、これを座標に依存した局所的なパラメータというものに置き換えます。
とします。ここで、ある関数が存在して、とかけるとすると、
なので、
が成り立ちます。このような局所的なゲージ変換だと例えば、
となります。この第三項は大域的ゲージ変換の場合には出てきませんでした。この項を打ち消して対称性を回復させるように、ゲージ場を導入するのがゲージ理論の一般的な処方になります。共変微分とゲージ場の変換則は次の形を要請します。
となりますが(ここの計算は少し大変です)、このゲージ場を対称部分と反対称部分に分解、すなわち
としてみると、
となり、打ち消したい項のためには反対称部分は働かないことがわかります。この役に立たない反対称部分は0として落としてしまいます。つまり、ゲージ場に対称性を要請しても理論として問題がないことがわかります。
さて、大域的変換では、計量はで、でした。局所的変換では、をにおきかえ、をに置き換えることが自然であるので、次の計量の保存を要請します。
ところで、は未定義でしたが、これはが共変性を持つように定義します。*2
の変換性
から、
とすればよいことがわかります。さきほどの要請より、
となることがわかります。これはまさに、(擬)Riemann幾何学のLevi-Civita接続です。ゲージ場の対称部分としてLevi-Civita接続係数が得られます。接続係数は一般座標変換に対して不定性があったので、ゲージ場としての性質が備わっているというのは確かにあっていますゲージ場の一般論から、ゲージ場の強さ*3は、
となります。これもまさに、(擬)Riemann幾何学のRiemann曲率テンソル成分になっています。このことから、ゲージ場の強さはしばしばゲージ場の曲率とも呼ばれます。重力場の方程式は、この微分幾何学的性質から、スカラー曲率を採用します。*4 これは不変なのでもっともらしく、まさにEinstein-Hillbert作用になります。
*1:物質場としてのスピノル場はこのでは考えることができません。もう一つのやり方があって、局所本義ローレンツ変換で考え、四脚場を考え、一般座標へ写像します。このやり方のほうが自然で正当のようですが僕の知識を考え、の方にしました。
*2:ゲージ場の一般論では、ゲージ変換が座標変換を伴わないので、共変微分が不変性を持つように定義しました。つまり、共変微分は重力場のときのみに限ってその名の通り共変性を持ちますが、重力場以外のときには不変性をもち、このときには「不変微分」と呼ぶべき ものだということだとわかります。しかし慣習ですべて共変微分と呼ぶようになっています。
*3:共変微分の非可換性で定義します。詳しくはこちらの記事fumofumobun.hatenablog.jpを参考にしてください。