ぶちゅり

日々学んだ物理学に関することをメモしていきます。コメントでのご指摘お願いします。

【場の古典論】ざっくりと標準模型

この記事は参考文献を大いに参考にしました。自然界の力は強い力、電弱力、重力に大別されます。電弱力は対称性の自発的破れというものによって、弱い力と電磁力になります。

物質場とゲージ場とヒッグス場

まず、標準模型では物質を構成する物質場と、これと相互作用をすることによって力を伝えるゲージ場、質量を与えるヒッグス場があります。これらは素粒子を呼ばれますが、場を量子化しなければ粒子という描像は得られないのでいまの古典論の範囲で、場と呼び続けることにします。物質場はさらに陽子や中性子を構成するクォークと電子やニュートリノレプトンに大別され、スピンとしての内部時自由度が2あるスピノル場(つまりスピン量子数が2)で、ゲージ場は強い力の場のグルーオンと弱い力のウィークボソン、電磁力の電磁場(光)に大別され、スピンの自由度が3あるスピン量子数1のベクトル場で、ヒッグス場は物質場やゲージ場に質量を与えるもので、スピンの自由度が0のスピン量子数0の複素スカラー場です。

f:id:fumofumobun:20200422130829p:plain
標準模型の物質場とゲージ場とヒッグス場

物質場

まず、物質場には3世代あり、各世代では質量のみが異なります。つまりヒッグス場がなければ3世代の区別はつきません。各世代ごとに、「上」と「下」の場があり、クォークであれば第一世代はアップuとダウンdレプトンは電子ニュートリノ\nu_{e^-}と電子e^-の対になっています。また、スピノル場である物質場にはそれぞれにカイラルという自由度が2あり、左巻きLと右巻きRと呼ばれます。そして、クォークにはカラー(色)という自由度が3あり、レプトンにはカラーの自由度がありません。

f:id:fumofumobun:20200422132013p:plain
物質場
例えば、第一世代について、アップu、ダウンd、電子ニュートノ\nu_{e^-}、電子e^-について、^{スピン}物質の種類_{カイラル}^{カラー}という形で区別して列挙すると、^+u_{\rm L}^1,^+u_{\rm L}^2,^+u_{\rm L}^3,^+u_{\rm R}^1,^+u_{\rm R}^2,^+u_{\rm R}^3,^+d_{\rm L}^1,^+d_{\rm L}^2,^+d_{\rm L}^3,^+d_{\rm R}^1,^+d_{\rm R}^2,^+d_{\rm R}^3,^+{\nu_e}_{\rm L}^1,^+{{e^-}}_{\rm L}^1, ^+{{e^-}}_{\rm R}^1,^-u_{\rm L}^1,^-u_{\rm L}^2,^-u_{\rm L}^3,^-u_{\rm R}^1,^-u_{\rm R}^2,^-u_{\rm R}^3,^-d_{\rm L}^1,^-d_{\rm L}^2,^-d_{\rm L}^3,^-d_{\rm R}^1,^-d_{\rm R}^2,^-d_{\rm R}^3,^-{\nu_e}_{\rm L}^1,^-{{e^-}}_{\rm L}^1, ^-{{e^-}}_{\rm R}^1
ただし、右巻きニュートリノ^+{\nu_e}_{\rm R}^1,^-{\nu_e}_{\rm R}^1はまだ観測されていないので含めてはいません。

強い力とSU(3)_C対称性

ゲージ変換として、カラーのSU(3)変換を考えてみます。例えば、クォークはカラーが3自由度あるので、SU(3)_Cの3次元表現すなわち基本表現U_3\in SU(3)を次のように作用させる変換、例えば

u\rightarrow u'=U_3 u=U_3
\left(
\begin{array}{c}
u^1\\
u^2\\
u^3
\end{array}
\right)
レプトンにはカラーの自由度がないので、自明表現1\in SU(1)が作用する変換、例えば

\displaystyle e^-\rightarrow {e^-}'=1e^-=e^-
をします。


強い力のゲージ場すなわちグルーオンは、クォークの場合には

\displaystyle G_\mu =\sum_{a=1}^{3^2-1} G^a_\mu \frac{\lambda^a}{2}
とします。{\lambda^a}/{2}\mathfrak{su}(3)の生成子です。共変微分

\displaystyle \partial_\mu\rightarrow D_\mu=\partial_\mu+ig_3 G_\mu
として、クォークに作用する\partial_\muD_\muに置き換えます。グルーオンの強さを

\displaystyle \mathcal F_{\mu\nu}=\frac{1}{ig_3}[D_\mu,D_\nu ]
とし、これは

\displaystyle \mathcal F_{\mu\nu}\rightarrow \mathcal F'_{\mu\nu}=U_3\mathcal F_{\mu\nu}U_3^{-1}
と変換されます。よって、

\displaystyle {\rm tr}(\mathcal F_{\mu\nu}\mathcal F^{\mu\nu})
は相対論的にもゲージ論的にも不変です。レプトンの場合には、そのようなゲージ場がなくても対称性が保持されるので、このような置き換えは必要ありません。このことは、レプトンには強い力が働かないということを表しています。そして、カイラルはこのようなカラーの変換で独立に変換することがわかっています。強い相互作用がある第一世代に対するラグランジアン密度は次のように表されます。

\displaystyle \mathcal L_1=\sum_{\psi=u,d}\bar{\psi}(i\gamma^\mu (\partial_\mu+ig_3 G_\mu))\psi-\frac{1}{2}{\rm tr}(\mathcal F_{\mu\nu}\mathcal F^{\mu\nu}) +\sum_{\psi=\nu_{e^-},e^-}\bar{\psi}(i\gamma^\mu \partial_\mu)\psi

電弱力とSU(2)_L\times U(1)_Y対称性

ゲージ変換として、左巻きカイラルの上下の対となる物質場のSU(2)変換を考えてみます。例えば、クォークは、SU(2)_Lの2次元表現すなわち基本表現U_2\in SU(2)を次のように、SU(2)_L2重項に作用させる変換、例えば

\left(
\begin{array}{c}
u_{\rm L}\\
d_{\rm L}
\end{array}\right)\rightarrow
\left(
\begin{array}{c}
{u_{\rm L}}'\\
{d_{\rm L}}'
\end{array}\right)=U_2
\left(
\begin{array}{c}
u_{\rm L}\\
d_{\rm L}
\end{array}\right)

\left(
\begin{array}{c}
\nu_{e\rm L}\\
e^-_{\rm L}
\end{array}\right)\rightarrow
\left(
\begin{array}{c}
{\nu_{e\rm L}}'\\
{{e^-}_{\rm L}}'
\end{array}\right)=U_2
\left(
\begin{array}{c}
\nu_{e\rm L}\\
e^-_{\rm L}
\end{array}\right)
をします。右巻きカイラルはこの変換にともなって、SU_L(1)1重項に自明表現1\in SU(1)が作用します、例えば

\displaystyle e^-_{\rm R}\rightarrow {e^-_{\rm R}}'=e^-_{\rm R}
となります。


SU(2)_Lのゲージ場すなわちSU(2)_Lゲージボソンは、クォークの場合には

\displaystyle W_\mu =\sum_{a=1}^{2^2-1} W^a_\mu T \frac{\sigma^a}{2}
とします。{\sigma^a}/{2}\mathfrak{su}(3)の生成子です。共変微分

\displaystyle \partial_\mu\rightarrow D_\mu=\partial_\mu+ig_2 W_\mu
として、SU(2)_L2重項に作用する\partial_\muD_\muに置き換えます。SU(2)_Lゲージボソン強さを

\displaystyle F_{\mu\nu}=\frac{1}{ig_2}[D_\mu,D_\nu]
とします。このSU(2)_L左巻きカイラルは上下2種類の異なる場が交じり合って変換することがわかります、右巻きカイラルは不変であり、このことは右巻きカイラルには電弱力が働かないということを示しています。


電磁場の場合と同様に、すべての物質場は位相変換に対する対称性もあります、たとえばU_1=e^{ig_1\Lambda}\in U(1)

u_L\rightarrow {u_L}'=U_1 u_L
のような変換です。


U(1)_Yゲージボソン

B_\mu
で、共変微分

\displaystyle \partial_\mu\rightarrow D_\mu=\partial_\mu+ig_1 \frac{Y}{2}B_\mu
で、YU(1)_Y電荷(ハイパーチャージ)といい、物質ごとに値が決まっています。

SU(3)_C\times SU(2)_L\times U(1)_Y対称性

上であげたSU(3)_CSU(2)_L\times U(1)_Yをまとめたものが標準模型となります。しかし、このゲージ対称性のもとでは質量項が禁止されています。ヒッグス場\Phiを導入すると、この対称性が自発的に破れて、物質場や一部のゲージ場は質量を獲得するようです。このあたりは勉強不足でまだ全然わかっていません。このときに、SU(2)_L\times U(1)_Y対称性がU(1)_Eという電磁力の対称性にまで落ちます。このような理論を標準模型といいます。標準模型には重力が考えられていません。


参考文献

坂本眞人 (2014) 『場の量子論-不変性と自由場を中心にして-』 裳華房.