一般ゲージ場論とは、電磁場のゲージ理論などを具体性にとらわれず、より一般的に述べた理論です。
ゲージ原理の一般化
電子場と電磁場の相互作用でみたゲージ原理を、任意の物質場とゲージ場に関して一般化してこれを物理の原理とすることを考えてみます。これを原理として現象がうまく説明できればゲージ理論の成功ということになります。ゲージ原理は次のように一般化されます。「成分の場(添字は様々な種類の場の通し番号で、スピノルやテンソルの添字である)を、個の連続パラメータで定まる線形Lie群の元による大域一般ゲージ変換
をするとき、の基礎方程式を定める作用が不変すなわち
であるという大域一般ゲージ対称性を備えているとする。は恒等変換である。連続パラメータを時空に依存する関数に置き換えた次の局所一般ゲージ変換
をするとき、作用の対称性を回復させるようにを修正するべし。」というのがゲージ原理に基づく問題を一般化した、一般ゲージ原理となります。
一般ゲージ場の導入
まず、大域一般ゲージ変換1本目の式の無限小変換で考えます。無限小変換をあとで積分すれば有限変換となるので、1次の精度の無限小変換で本質は尽きます。つまり、
ただし、
であり、これはLie群のLie代数の生成元です。すなわち、にはと一意に表されるような係数が存在します。そして、
を満たすがの構造定数です。さて、大域一般ゲージ対称性の要請の仮定によっては、
で、微小パラメータの任意性より、
が成り立っています。ここで、局所一般ゲージ変換におきかえると、今度は
のもとで、
であることに注意して、
とnon-zeroになります。これを打ち消すような新しい場を導入します。これを一般ゲージ場といいます。18本目の式の個のに比例する項をの適当な線形結合によって打ち消すには、でなければなりません。必要最小限の自由度を選ぶ、すなわちとすると、とかけます。無限小局所一般ゲージ変換、11本目の式に伴って、一般ゲージ場は
と変換されるものと仮定します。つまり、
です。このを決定することが本質的な問題のひとつになっていきます。物質場と一般ゲージ場が相互作用する系のラグランジアン密度を
とします。この関数形を決定することが問題です。まず、は一般ゲージ原理から一般局所ゲージ変換によって不変であるので、
が要請され、, に対して恒等的に成り立つために、
です。まず、26本目の式はの中にはの形で含まれていることと同値です。これを次のようにまとめて、共変微分ということにします。
微分幾何に慣れていれば27本目の式はゲージ場が接続に対応しているということがわかるかと思います。今回はこの数学的な話には深入りせず、計算を続けていきます(次回、微分幾何学とゲージ理論については勉強して別記事にあげていく予定です)。共変微分の形で含まれるということがわかったので、ラグランジアン密度を次のように書き直します
したがって、合成関数のチェインルールから
となります。これらを25本目の式式に代入します。
の関数形はこのままでは定められないのですが、と同じ関数形だと仮定します。つまり、次を仮定します。
ここで、の変換性がの変換性と同じであることを要請します。すなわち、
を要請します。このもとで、8本目の式について、の引数がになっていて、かつ42本目の式が成り立っているので、大域ゲージ対称性の恒等式10本目の式が成り立ちます。
これを41本目の式に代入して、
を得ます。これが恒等的に成り立つためには
です。これによって、ゲージ場の変換則が決定され、問題のひとつが解決されました。
一般ゲージ場の方程式
一般ゲージ場の方程式は、一般ゲージ場の方程式を定める作用の候補として、まず要請されるのが相対論的に不変であることと局所一般ゲージ変換に対して不変であることです。一般ゲージ場の作用を
とします。無限小ゲージ変換、46本目の式に対する不変性が要請されるので、
より、恒等式
を得ます。64本目の式より、26本目の式で考えたことと同様に、の形で作用に含まれるということになります。の代わりに、その形を含むで表すとします、すなわち
とします。すると、チェインルールより
となります。これらを63本目の式に代入すると、
ゆえ、がのみに依るということになります。これで改めて、一般ゲージ場のラグランジアン密度を
とします。57本目の式の関数形とは異なることに注意してください。以上の要請からは、これ以上具体的にラグランジアン密度を定めることはできません。
参考文献
内山龍雄 (1987) 『一般ゲージ場論序説』 岩波書店.