ぶちゅり

日々学んだ物理学や数学、化学に関することをメモしていきます。間違ったことを言っているかもしれません。英語版は.jp→.com。記事はサイレントに更新・訂正することがよくあります。

【一般相対性理論】ゲージ場としての重力場(概説)

電磁場などはゲージ場であることは有名であるかと思います。ゲージ理論とは、ある種の変換、ゲージ変換に対する作用の不変性を原理におく物理理論です。このゲージ理論を一般化した一般ゲージ理論では、重力場も(一般)ゲージ場として捉えることができます(内山龍雄による)。ここではその概要を述べていきます。

重力場を得るためのゲージ変換

重力場を得るときに特に他と違って特別な点というのが、ゲージ変換が座標の変換によってもたらされることです。これを一般ゲージ変換ということにします。一般ゲージ変換は、
\displaystyle x^\mu\rightarrow x'^\mu(x)
という座標変換によって、諸量が変分を受けます。電磁場の場合は場の位相変換、つまりe^{i\theta}不定性を利用したゲージ変換でしたが、重力場の場合は、どのような座標系をとっても、真な物理法則は変わらないという不定性を利用したゲージ変換ということになります。

大域的一般ゲージ変換

まず、大域的ゲージ変換としてローレンツ変換に対して作用が不変、いえ、これをより一般化して線形変換
x^\mu\rightarrow x'^\mu=a^\mu_\nu x^\nu=x^\mu+\epsilon^\mu_\nu x^\nu+\mathcal O(\epsilon^2)
を考えます。\epsilonは微小パラメータです。(a^\mu_\nu)正則行列、すなわち\det(a^\mu_\nu)\not=0だけを課しておきます。この要請は、座標系を移りあうとき、もとの座標系に戻ったときに物理が変わってしまうとおかしいという物理的な要請に対応しているかと思います。

ラグランジアン密度は、変換x^\mu\rightarrow x'^\mu=x^\mu+\epsilon^\mu_\nu x^\nu+\mathcal O(\epsilon^2)に対してテンソル成分として振る舞う場の集まり\phi_A(x)(A=0,\cdots,N-1)により、\mathcal L(\phi_A,\partial_\mu \phi_A,g_{\mu\nu})であるとします。つまり、作用I
\displaystyle I=\int \mathcal L(\phi_A,\partial_\mu \phi_A,g_{\mu\nu})\sqrt{-g}d^4x
で、これが大域的な線形座標変換に対して不変になっています。g_{\mu\nu}は計量テンソルで、大域的な変換を考えているので時空全体で一定値を取ります。この変換のうち特殊なものとして、ローレンツ変換があり、この場合、g_{\mu\nu}=\eta_{\mu\nu}={\rm diag}(-1,+1,+1,+1)となります。

そして、\epsilonを微小パラメータとして1次の精度で展開した座標変換による諸量の第一変分を計算していき、作用の変分を考えます。今回は概説ということで一般ゲージ変換の場合に特徴的な例をいくらか載せるだけにとどめておきます(僕自身、まだ計算が追えきれていないというのと、いまレポートとテストに追われているという理由があります...)。\displaystyle \boldsymbol G^\mu_\nuを変換x^\mu\rightarrow x'^\mu=x^\mu+\epsilon^\mu_\nu x^\nuによる生成子のN次表現行列とします、つまり、\boldsymbol G^\mu_\nu=((\boldsymbol G^\mu_\nu)_A^B)です。\phiN次縦ベクトルとみなします、つまり、\phi=(\phi_A)です。
\displaystyle \delta\phi_A:=\epsilon^\nu_\mu (\boldsymbol G^\mu_\nu)_A^B \phi_B=\epsilon^\nu_\mu(\boldsymbol G^\mu_\nu\phi)_A
\displaystyle \delta \partial_\mu =-\epsilon^\nu_\mu\partial_\nu
という関係があって、
\delta (\partial_\mu\phi_A)=\partial'_\mu\phi'_A-\partial_\mu \phi_A
=(\partial_\mu+\delta\partial_\mu)(\phi_A+\delta\phi_A)-\partial_\mu\phi_A
=\partial_\mu(\delta\phi_A)+(\delta\partial_\mu)\phi_A
=\epsilon^\nu_\mu(\boldsymbol G^\mu_\nu \partial_\mu\phi)_A-\epsilon^\nu_\mu\partial_\nu\phi_A
と、例えばこんなふうに変分と微分が可換でなくなって、形式的にライプニッツ則が成り立ちます。このような点が一般ゲージ変換での特徴となっています。
このような一般ゲージ変換のもと、作用は不変になっています。つまり、
\displaystyle \frac{\partial \mathcal L \sqrt{-g}}{\partial \phi_A}(\boldsymbol G^\mu_\nu \phi)_A +\frac{\partial \mathcal L \sqrt{-g}}{\partial \partial_\mu\phi_A}(\boldsymbol G^\mu_\nu \partial_\mu\phi)_A -\frac{\partial \mathcal L \sqrt{-g}}{\partial \partial_\mu\phi_A}\partial_\mu\phi_A -2\frac{\partial \mathcal L \sqrt{-g}}{\partial g_\mu\lambda}g_{\nu\lambda}+\delta^\mu_\nu \mathcal L\sqrt{-g}=0
を要請するというのが原理です。

局所的一般ゲージ変換

ゲージ理論の一般論に従うと、さきほどの座標変換を局所的なものに置き換える、つまり、
\epsilon^\mu_\nu\rightarrow \xi^\mu_\nu(x)
として、(つまり、g_{\mu\nu}(x)などが時空全体で一定なのではなく、各点各点で変わっているということです。)
\xi^\mu_nu(x)=\partial_\nu\xi^\mu(x)
x^\mu\rightarrow x'^\mu\rightarrow x^\mu+\xi^\mu(x)(\xi^\mu(x):=\xi^\mu_\nu(x)x^\nu)から要請されます。
このような局所的な一般ゲージ変換だと例えば、
\delta(\partial_\mu\phi_A)=-\partial_\mu\xi^\nu\partial_\nu\phi_A+\partial_\mu(\partial_\lambda \xi^\kappa(\boldsymbol G^\lambda_\kappa \phi)_A)
=-\xi^\nu_\mu \partial_\nu\phi_A+ \xi^\kappa_\lambda(\boldsymbol G^\lambda_\kappa \partial_\mu\phi)_A+\partial_\mu\xi^\kappa_\lambda(\boldsymbol G^\lambda_\kappa \phi)_A
となります。この第三項は大域的一般ゲージ変換の場合には出てきませんでした。この項を打ち消して対称性を回復させるように、ゲージ場A^\mu_{\nu\lambda}を導入するのがゲージ理論の一般的な処方になります。

ゲージ場としての重力場

上の局所的一般ゲージ変換からの帰結として、例えば、共変微分
\nabla_\mu \phi_A=\partial_\mu\phi_A+A^\lambda_{\mu\nu}(\boldsymbol G^\nu_\lambda \phi)_A
と要請され、やや計算や議論を経ると、
\nabla_\lambda g_{\mu\nu}=0

\displaystyle A^\mu_{(\nu\lambda)}=\frac{1}{2}g^{\mu\kappa}(\partial_\lambda g_{\nu\kappa}+\partial_\nu g_{\kappa\lambda}-\partial_\kappa g_{\nu\lambda})=\Gamma^\mu_{\nu\lambda}
と、ゲージ場の対称部分としてレビ-チビタ接続係数が得られます。接続係数は一般座標変換に対して不定性があったので、ゲージ場としての性質が備わっているというのは確かにあっています。ゲージ場の非対称部分A^\mu_{[\nu\lambda]}\partial_\mu\partial_\nu\xi^\lambdaの打ち消しには役には立たず、意味のない余計な量となります。これは0とするようです、つまり捩れなしです。ゲージ理論の一般論として、曲率\boldsymbol R_{\mu\nu}:=R^\lambda_{\kappa\mu\nu}\boldsymbol G^\kappa_\lambdaからラグランジアン密度をつくると、まず\Gamma^\lambda_{\mu\nu}g_{\mu\nu}は独立なものとして、レビ-チビタ接続は拘束条件とし、
\displaystyle \mathcal L_R=c{\rm tr}(\boldsymbol R_{\mu\nu}\boldsymbol R_{\lambda\kappa})g^{\mu\lambda}g^{\nu\kappa}
\displaystyle \mathcal L_C =\Lambda^{(\mu\nu)}_\lambda\left(\Gamma^\lambda_{\mu\nu}-\frac12g^{\lambda\kappa}(\partial_\mu\ g_{\kappa\nu}+\partial_\nu g_{\mu\kappa}-\partial_\kappa g_{\mu\nu})\right)
とおき
\mathcal L_G=\mathcal L_R+\mathcal L_C
\displaystyle \int \mathcal L_G\sqrt{-g} d^4x
とします。\mathcal L_Cはレビ-チビタ接続の拘束条件のために必要で、\Lambda^{(\mu\nu)}_\lambdaは未定乗数で、テンソル成分です。

しかし、上のようにゲージ理論の一般的な処方に従って得た作用から変分原理によって場の方程式を得ると、アインシュタイン方程式とは異なった方程式になるようです。

参考文献

内山龍雄 ( 1987) 『一般ゲージ場序説』 岩波書店.