ぶちゅり

日々学んだ物理学や数学、化学に関することをメモしていきます。間違ったことを言っているかもしれません。英語版は.jp→.com。記事はサイレントに更新・訂正することがよくあります。

【一般相対性理論】四脚場とローレンツ群の表現

スカラー場やスピノル場というのは局所ミンコフスキー空間ローレンツ群の表現を考えることで数学的にとらえることができます.

慣性系の変換

特殊相対性理論の要請としては,ミンコフスキー空間において本義ローレンツ変換*1で物理法則が共変であることです.ローレンツ計量を不変に保つ変換として要求すると,より広くポアンカレ変換

x^\mu\rightarrow x'^\mu=\Lambda^\mu_\nu x^\nu +a^\mu
になりますが,特殊相対性理論の要請としては,ローレンツ変換

x^\mu\rightarrow x'^\mu=\Lambda^\mu_\nu x^\nu
のうち,さらに時間反転をしない\Lambda^0_0 \geqq 1,空間反転をしない\det \Lambda=1ものだけでよいです.これを本義ローレンツ変換SO^+(3,1)といいます(O(3,1)単位元の連結成分がSO^+(3,1)).以後,断りのない限り本義ローレンツ変換のことをローレンツ変換といいます.


四脚場の回転

一般に重力があるような曲がった時空(4次元ローレンツ多様体)\mathcal Mのある点x=x^\mu \partial_\muにおいて,接空間として平坦な局所ミンコフスキー空間T_x(\mathcal M)を考えることができます.T_x(\mathcal M)において,特殊相対性理論を考えることができます.ここで,次のようなものを考えます.

e_a=e^\mu_a \partial_\mu
ただし,\det(e^\mu_a)(>0)\in GL(4)とします.そして,T_x(\mathcal M)のフレームをe_aととらえます.つまり,e^\mu_a\mathcal Mの点xにおける座標基底\partial_\muからT_x(\mathcal M)のフレームへの写像の役割をしています.このフレームが正規直交フレームであると仮定します,すなわちT_x(\mathcal M)の各点で

g(e_a,e_b)=g_{\lambda\kappa}e^\mu_a <\partial_\mu,dx^\lambda>e^\nu_b<\partial_\nu,dx^\kappa>\\
=g_{\mu\nu}e^\mu_a e^\nu_b=\eta_{ab}
を仮定します((擬)リーマン多様体にはいつも正規直交フレームをとることができます).(e^{-1})^a_\mu=:e^a_\muと書くことにして,上の式から逆に

g_{\mu\nu}=e^a_\mu e^b_\nu \eta_{ab}
と表すことができます.この正規直交フレームの双対1-形式の組を

\theta^a:=e^a_\mu dx^\mu
で定められます.よって,\mathcal M上の計量gは点xで,

g(x)=g_{\mu\nu}(x)dx^\mu(x)\otimes dx^\nu(x)=\eta_{ab}\theta^a(x)\otimes \theta^b(x)
と書けます.

ところで,あるg_{\mu\nu}に対して(これを固定して),g_{\mu\nu}(x)=e^a_\mu(x) e^b_\nu(x) \eta_{ab}と書けるような正規直交双対基底は一意ではなく,たくさんあります.xで正規直交双対基底を回転させる自由度を持っています.その回転行列を(\Lambda^a_b)\in SO(3,1)とし,

\theta^a(x)\rightarrow \theta'^a(x)=\Lambda^a_b \theta^b(x)
という回転で,正規直交基底は

e_a(x)\rightarrow e'_a(x)=(\Lambda^{-1})^b_a e_b(x)
と逆回転され,四脚場は

e^a_\mu(x)\rightarrow e'^a_\mu(x)=\Lambda^a_b e^b_\mu(x)
と回転します.よって,

g_{\mu\nu}(x)=e^a_\mu(x) e^b_\nu(x) \eta_{ab}\\
=e'^a_\mu(x) e'^b_\nu(x) \eta_{ab}
がわかります.(簡単にいえば,添字\mu,\nu,\cdotsは局所回転においてスカラーです)


2種類のローレンツ変換

座標変換としてのローレンツ変換\Lambda^\mu_\nuと四脚場の回転としてのローレンツ変換\Lambda^a_bは違うんですが,この2つを対応付けたいですよね.ちょっと僕にはわかりません.誰かご教示願います.

とはいえ,重力のある一般に曲がった時空を扱う限り,四脚場の回転としてのローレンツ変換を考えます.そしてこの群の表現を求めたいわけですが,どちらの意味にしても群としては同じなので数学的なところは変わりません.


無限小ローレンツ変換

無限小ローレンツ変換は微小パラメータ\epsilon^a_bとして

\Lambda^a_b=\delta^a_b+\epsilon^a_b
とかけます.SO(3,1)はミンコスキー計量を保ち,

 \Lambda^a_c \eta_{ab} \Lambda^b_d=\eta_{cd}
となるので,

\epsilon_{ab}=-\epsilon_{ba}
と反対称性があることがわかります.つまり,微小パラメータは6個が独立です.


交換関係と生成子

無限小ローレンツ変換N次表現行列を

D(\Lambda)^A_B=D(\delta+\epsilon)^A_B\\
=\delta^A_B-\frac i2\epsilon^{ab}(M_{ab})^A_B
とします(iや2などの因子は後の便利のためです).簡単のために,N=4のときのことを考えてみると,

\epsilon^a_b=-\frac i2\epsilon^{cd}(M_{cd})^a_b
とかけるわけですから,

(M_{cd})^a_b=i(\delta^a_c \eta_{db}-\delta^a_d \eta_{cb})
と書けます.これを用いて,以下のような交換関係を導くことができます.

[M_{ab},M_{cd}]=-i(\eta_{ac}M_{bd}-\eta_{bc}M_{ad}+\eta_{bd}M_{ac}-\eta_{ad}M_{bc})
交換関係は表現の仕方に依らないので,この関係が一般的に成り立ちます(一般の表現でも表現の性質を使えば示せますが結構計算が重たいです).このM_{ab}ローレンツ群の生成子になっています.これからしたいことは,まずこの既約表現を求めることです.


既約表現

このM_{ab}は座標変換としてのローレンツ変換の方での空間回転L_i(i=1,2,3)とローレンツブーストK_i(i=1,2,3)に分けることができます.これを次のように定義すると,うまいことそれぞれが表す生成子になります.

L_i:=\frac12\epsilon_{ijk}M^{jk}\\
K_i:=L_{i0}
\epsilon_{ijk}はレビ-チビタの完全反対称テンソルです. 具体的にこれを計算してみると回転やブーストの生成を表すエルミート演算子であることがわかります.またこれらは次の交換関係を満たします.

\displaystyle [L_i,L_j]=\sum_k i\epsilon_{ijk}L_k\\
\displaystyle [L_i,K_j]=\sum_k i\epsilon_{ijk}K_k\\
\displaystyle [K_i,K_j]=-\sum_k i\epsilon_{ijk}L_k
ここで,

J_i^\pm:=\frac12(L_i\mp iK_i)
とおくと,交換関係は

\displaystyle [J_i^\pm,J_j^\pm]=\sum_k i\epsilon_{ijk}J_k^\pm\\
[J_i^+,J_i^-]=0
となります.これはJ_i^+J_i^-がそれぞれが独立に角運動量代数,すなわちSO(3)(SU(2))のリー代数\mathfrak{so}(3)(\mathfrak{su}(2))と一致しています.

これから,角運動量のときと同様に,そこから言葉を借りて「方位量子数」j^+,j^-=0,\frac12,1,\frac32,\cdotsとして「磁気量子数」m^+,m^-はそれぞれ2j^++1,2j^-+1個あります.

この独立な角運動量代数の生成子の直積表現が一般の表現を与えます.これを(j^+,j^-)表現D^{j^+j^-}といいます.具体的に表現を考えていけば,接ミンコフスキー空間上のスカラーやスピノル,ベクトルなどの場が考えられます.これはまたいつか記事にしたいと思います.座標変換としてのローレンツ変換を考えても同様です.また曲がった時空のゲージ理論にもつながります.

参考文献

中原幹夫 著『理論物理学のための幾何学トポロジーⅠ[原著第2版]』2018 日本評論社
http://hep1.c.u-tokyo.ac.jp/~kazama/QFT/qft3slide.pdf

*1:正規ローレンツ変換とも言います.