ぶちゅり

日々学んだ物理学に関することをメモしていきます。コメントでのご指摘お願いします。

【電磁気学】相反定理・分極の例題

砂川理論電磁気学の問題を解いてみました.今回は参考文献の第4章の問題(12)と(14)です*1

相反定理

相反定理というのは導体系の静電場で,方程式

\displaystyle \sum_{k} Q_k \phi_k'=\sum_{k} Q_k' \phi_k
が成り立つことです.詳細は参考文献p.100あたりを参照してください.

相反定理の例題

「半径aの3個の導体球1,2,3を,中心距離がr_1r_2(r_1,r_2\gg a)となるように一直線上にならべて,中央の球2にだけ電荷Qをあたえる.次に,2を1に結び,その接続を断ったあとで,2を3にむすぶとき,3のえた電荷量を求めよ.」(参考文献p.125 第4章 問題(12))

相反定理をぜひ使いたいところですが,このままでは電位や電荷の情報不足すぎます.そこで,電位などを計算してみます.

厳密にやるには,鏡像法で電位などは求まるのですが,今回は簡単のため次の論法でいきます.

r_1,r_2>>aなので,お互いがお互いを点電荷とみなせてクーロンポテンシャルで電位を計算すればよい,という方法をとります.そうするとかなり簡単になります.

相反定理を使いやすくするために,電荷と電位の表を作ってみます.

導体球1 導体球2 導体球3
状態1 0,\frac{Q}{4\pi\epsilon r_1} Q,\frac{Q}{4\pi\epsilon a} 0,\frac{Q}{4\pi\epsilon r_2}
状態2 \frac{Q}{2},\phi \frac{Q}{2},\phi 0,\frac{Q/2}{4\pi\epsilon}(\frac{1}{r_1+r_2}+\frac{1}{r_2})
状態3 \frac{Q}{2},\phi' \frac{Q}{2}-q,\phi'' q,\phi''

となります.

状態2では導体球1,2のどちらにとっても導体球3は全電荷0の点電荷としてみなせるので,導体球1,2に対称性が生じて

\displaystyle \frac{Q}{2}
電荷を導体球1は得ます(当然導体球2もこの電荷になる).qが最終的に求めたいものです.この表から相反定理を使ってみてください.

この表から立てられる1次方程式は状態1-2,2-3,3-1の3つです.一方,未知数はq,\phi,\phi',\phi''の4つです.これではどう頑張っても解けませんね.

ということで,自分で勝手に別の状態をつくってしまいます.値がわかるものであり,既知のパラメータを含むものがよいので,それぞれに電荷Qを与えた状態を考えてみましょう.これもクーロンの法則で簡単に電位は計算できます.\frac{1}{a}\gg \frac{1}{r_1},\frac{1}{r_2}を利用するととってもきれいになって,

導体球1 導体球2 導体球3
状態4 Q,\frac{Q}{4\pi\epsilon a} Q,\frac{Q}{4\pi\epsilon a} Q,\frac{Q}{4\pi\epsilon a}

になります.

未知数は増えていません.しかし,方程式は3つ増えました.未知数に対して方程式が多いので解が存在しない可能性もあるので,すべての方程式をちゃんと満たしているかチェックする必要があります.さきほどの近似\frac{1}{a}\gg \frac{1}{r_1},\frac{1}{r_2}をちゃんと使えば満たしています.

結局答えはシンプルに

\displaystyle q=\frac{Q}{4}
になります.ポイントは自分で勝手に考えやすい状態を設定しちゃうということですね.

分極

外部電場が十分につよく,通常の物質であるとすると,分極ベクトル\boldsymbol P,分極電荷\rho_dにはガウスの法則

{}-{\rm div}\boldsymbol P = \rho_d
が成り立ちます.

電束密度\boldsymbol D

\boldsymbol D =\epsilon \boldsymbol E = \epsilon_0 \boldsymbol E+\boldsymbol P
の関係があります.この電束密度と真電荷に対してガウスの法則が成り立ちます.すなわち,

{\rm div}\boldsymbol D = \rho_e
です.

分極の問題

「真空中にQなる電荷をもった導体があったとする.この導体による静電場の二つの等電位面\phi_1\phi_2のあいだの空間を均質誘電体でみたすときのエネルギーの減少量を求めよ.」(参考文献p.125 第4章 問題(14))

差し込む均質誘電体の比誘電率\epsilon^\astとします.遠隔作用的立場で,静電場によるエネルギーW_e

\displaystyle W_e=\frac{1}{2}\int_V \rho(\boldsymbol x)\phi(\boldsymbol x)d^3x
になります.最初のエネルギーから誘電体をみたしたあとのエネルギーを素直に引きます.導体の電位を\phi_0として,分極電荷qqQ>0)とします.

\displaystyle W_e-W_e'=\left(\frac{1}{2}Q\phi_0\right)-\left(\frac{1}{2}Q\phi_0+\frac{1}{2}(-q)\phi_1+\frac{1}{2}q\phi_2\right)\\
\displaystyle =\frac{1}{2}q(\phi_1-\phi_2)
結局,分極電荷qを求めればいいんです.

普通のガウスの法則を\phi_1\phi_2の等電位面の間の空間を境界面に持つような閉領域Vに対して積分して適用すると,

\displaystyle \epsilon_0 \oint_{\partial V} \boldsymbol E\cdot \boldsymbol n dS=Q-q\\
\displaystyle \epsilon_0(\epsilon^\ast -1) \oint_{\partial V} \boldsymbol E\cdot \boldsymbol n dS=(\epsilon^\ast -1)(Q-q)
ここで,
\boldsymbol D=\epsilon_0 \epsilon^\ast \boldsymbol E=\epsilon_0 \boldsymbol E + \boldsymbol P
なので
\epsilon_0 (\epsilon^\ast -1)\boldsymbol E=\boldsymbol P
です.また,{}-{\rm div}\boldsymbol P = \rho_dを用いることにより,

q=(\epsilon^\ast -1)(Q-q)
を得ます.よって,

\displaystyle q=\left(1-\frac{1}{\epsilon^\ast}\right)Q
ですので,答えは

\displaystyle \frac{1}{2}\left(1-\frac{1}{\epsilon^\ast}\right)Q(\phi_1-\phi_2)
になるかと思います.

参考文献

砂川重信 著 『理論電磁気学 第3版』 (1999) 紀伊国屋書店

*1:これら2問は最初かなり悩みましたがなんとか解くことができました...一度わかってしまうとなんだそんなことか...ってなりますね