特殊相対性理論は歪みのないミンコフスキー時空間で物理を考えます。そしてこれを拡張した一般相対性理論では歪みのあり得る時空間で物理を考えます。やや混同されがちな特殊相対論と一般相対論の違いをここで明確にしていきたいと思います。
加速運動と加速系
まず、勘違いされがちなのが「特殊相対論では加速運動が扱えない」というものがあります。はっきり言っておくと、特殊相対論では加速運動を扱えます。特殊相対論で行っていることは、 加速運動する人からみた(加速系/非慣性系)物理を考えることまではしていませんが、静止あるいは等速直線運動する人からみた(慣性系)物理を考えることをしています。慣性系から加速運動は扱っているのです。慣性系から加速運動をみて、その加速運動している方へ乗り移るということを扱っていないだけなのです。慣性系から慣性系への変換がローレンツ変換で、慣性系から非慣性系へ...いや慣性系または非慣性系のいずれかから慣性系または非慣性系への変換が一般座標変換です。
そして、別に特殊相対論でも一般座標変換は扱うことはできます。ただ、特殊相対論の主張としては、そのような変換をすると運動方程式が変わってしまうというだけなのです。慣性系での運動方程式
は慣性系同士なら乗り移りまくっても、形が変わらない、
となるということです。この運動方程式から加速運動を扱っているというのは明白ですね。そして、この運動方程式が成り立っている慣性系からみて加速運動をしている物体へ乗り移り、非慣性系から運動を記述する運動方程式はというと...
となるのです(たしか)。なんだか見覚えのある項が右側に余分にきています、これが非慣性系であることからくる慣性力です。このエッセンスはニュートン力学にありますよね(基礎が大事ってこういうことですね)。
このように、方程式の形が変わってしまうのが見苦しいから特殊相対論では特殊相対性原理として「ローレンツ変換で結ばれる慣性系の間で物理法則が不変な形である」という原理にしているわけです。ニュートン力学ではガリレイの相対性原理「ガリレイ変換で結ばれる慣性系の間での物理法則が不変な形である」といっているだけです。ですから、原理としてはそうなんですが、高校物理等で散々やったように、非慣性系も扱うことはできて、しかし、ガリレイの相対性原理や特殊相対性原理が保証しないように、運動方程式の形が変わって、慣性力が表れて汚くなってしまうというだけのことなのです。
一般相対性理論
一方、一般相対性理論ではさらに原理を強い主張にしてしまいます。しかし、原理が複数あって、これらが根本的に別種のことであって、分離して考えなくてはいけないと思います。一般相対論という理論のなかに別種のものを入れてしまったがために、勘違いが起きやすくなっている原因のひとつになっていることかと思います。
原理の一つ目は、一般相対性原理「任意の座標系、慣性系に限らず非慣性系までも含め、物理法則が不変な形である」というものになります。さきほどの特殊相対論から考えるととても簡単なことです。さきほどの方程式
が変わらない、と言っているだけです(まではここでは解説せず、既知とします)。がゼロのような真っすぐな、まさに特殊な座標系すなわち慣性系だけの運動方程式の形を保証していたのが特殊相対性原理、もっと一般に保証してくれるのが一般相対性原理です。このように考えると、非相対論から相対論、古典論から相対論などのように、別に物理観自体が変わっているというわけではないですよね。
では他の原理はというと時空を歪める重力に関する言及です。しかし、今の話に時空の歪みというのは考えません。というか、上のことに、重力という力の見方をガラっと変えて、付け足すというか時空という対象物を変化させるものです。ですから個人的には「特殊相対性理論」「一般相対性理論」「重力理論」と段階を踏んで、一般相対性理論を分割してしまったほうがよかったのではないかと個人的に思っています。