一般相対性理論でも対称性と保存則の関係性であるネーターの定理が有効です。その対応のゲージ理論*1的な部分をこの記事では見ていきます。
ビアンキ恒等式
の変分として時空の真の歪みではなく、座標変換による変分を考えてみましょう。
fumofumobun.hatenablog.jpこの記事での変分というのは、時空間の歪み方を真にずらして、実際に達成される歪み方を解として探っていくことをしていたのですが、いま考えている変分とは既にその解が得られているという上で、つまり時空の歪み方が固定された上で、座標変換(時空への座標の貼り付け方)だけを考えて(つまり時空の歪み方は変えていないです)、そのもとでの不変性(対称性)から導かれる保存則を導こうという変分です。変換は一般座標変換、対称性(不変性)は一般相対性原理によるアインシュタイン-ヒルベルト作用の一般共変性をみます。簡単に次の微小な座標変換で考えます。有限な変換でもいいのですが、保存則をみるには微小な変換で1次の精度で十分で、簡単な計算で済みます。
ここで作用の変分の式に代入すると (定数の係数は省略し)、
ここで一般相対性原理より、任意のに対して不変なので、
ここで、
なので次の恒等式を得ます。
\begin{equation}
\nabla_\nu G^{\mu\nu}=\nabla_\nu \left(R^{\mu\nu}-\frac{1}{2}Rg^{\mu\nu} \right)=0
\end{equation}
これを(縮約された)ビアンキ恒等式といいます。一般座標変換に対する不変性(対称性)の要請から微分幾何学的な恒等式が得られ、一般相対性理論が美しく、また正当であることが実感できます。
エネルギー運動量保存則
前節において、をに置き換え、
\begin{equation}
\nabla_\nu T^{\mu\nu}=0
\end{equation}
を得ます。これをエネルギー運動量保存則といいます。一般座標変換に対する不変性(対称性)の要請から保存則が導かれるのです。