ぶちゅり

日々学んだ物理学に関することをメモしていきます。コメントでのご指摘お願いします。

【一般相対性理論】高次元時空の面積分について

高次元の超曲面での面積分というのを考えます。この記事の前にギボンズ-ホーキング項の記事を上げてしまって、完全に記事としての順番が前後してしまっているのですが、改めて高次元(4次元)での面積分についておさらいしようと思います。一般相対論への利用を想定します。

時間一定面での面積分

\mathcal MD次元時空(ローレンツ多様体)とします。まず、最もイメージがしやすい非光的時間一定面\Sigma_t上の面積分から考えます。こちらの記事

fumofumobun.hatenablog.jpでも少し解説をしたのですが、\Sigma_tに対して法線ベクトル場\boldsymbol n=n^\mu\frac{\partial}{\partial x^\mu}を考えることができます。時間一定面なのでこの法線ベクトル場成分は仮に未来向きだとすると、n^0=1, n^i=0ですね。(iは空間成分i=1,\cdots,D-1です。過去向きだとn_0=1で空間が0なのには変わりないです。)そうすると、この\boldsymbol nから射影テンソル\boldsymbol h^1_1、成分はh^\mu_\nu=\delta^\mu_\nu-\epsilon(\boldsymbol n)n^\mu n_\nuを考えることができて、反変あるいは共変ベクトル場をこの射影テンソル場で写像すると\boldsymbol nあるいは\boldsymbol n^*方向の成分を落として\Sigma_tに射影することができます。計量テンソル場についても同様で、縮約写像を用いて\Sigma_tに射影することができます。そしてこの射影した計量テンソル場を誘導計量テンソル場といい、ちょうど\boldsymbol h_2,成分h_{\mu\nu}=g_{\mu\nu}-\epsilon(\boldsymbol n)n_\mu n_\nuになるのでした(今は\epsilon(\boldsymbol n)=-1です)。次のようなみかたもできます。まず、任意の2つのベクトル場\boldsymbol v,\boldsymbol wを射影テンソルで射影します。この2つを射影した超曲面上で計量するには\boldsymbol g(\boldsymbol h^1_1(\boldsymbol v),\boldsymbol h^1_1(\boldsymbol w))とすればよいですね。これを成分で書けば

g_{\lambda\kappa}h^\lambda_\mu v^\mu h^\kappa_\nu w^\nu=(\delta_{\mu\kappa}-\epsilon(\boldsymbol n)n_\mu n_\kappa)h^\kappa_\nu v^\mu w^\nu

=(h_{\mu\nu}-\epsilon(\boldsymbol n)n_\mu n_\kappa h^\kappa_\nu)v^\mu w^\nu

=(h_{\mu\nu}-\epsilon(\boldsymbol n)n_\mu n_\kappa (\delta^\kappa_\nu-\epsilon(\boldsymbol n)n^\kappa n_\nu))v^\mu w^\nu

=(h_{\mu\nu}-\epsilon(\boldsymbol n)n_\mu n_\nu +\epsilon(\boldsymbol n)^3n_\mu n_\nu)v^\mu w^\nu

=h_{\mu\nu}v^\mu v^\nu

となっていて、\boldsymbol g(\boldsymbol h^1_1(\boldsymbol v),\boldsymbol h^1_1(\boldsymbol w))=\boldsymbol h_2(\boldsymbol v,\boldsymbol w)ですね。誘導計量はベクトルを射影して、射影した超曲面上で計量する性質を持っているということがわかると思います。そして、時間一定面\Sigma_tを考えていたということを思い出すと、

g_{\lambda\kappa}h^\lambda_\mu h^\kappa_\nu =g_{ij}h^i_\mu h^j_\nu

となります。なぜなら、\epsilon(\boldsymbol n)=-1,n^0=1,n_0=-1,n^i=0より、h^0_0=\delta^0_0-\epsilon(\boldsymbol n)n^0 n_0=1-(-1)\times 1\times (-1)=0, h^0_i=\delta^0_i-\epsilon(\boldsymbol n)n^0 n_i=0-\times(-1)\times 1\times 0=0となり、h^0_\mu=0となるから\lambda,\kappa=0の成分が落とせるからです。これは\Sigma_t上では

ds^2=g_{\mu\nu}dx^\mu dx^\nu=g_{ij}dx^\mu dx^\nu

となっているということです。いわれてみれば当たり前のことですよね。空間成分g_{ij}\gamma_{ij}と書きます。\gamma={\rm det}(\gamma_{ij})です。そうすると、\Sigma_t上の面積要素は

d\Sigma = dx^1\cdots dx^{D-1} \sqrt{\gamma}

 となります。ここで、クラメルの公式からg^{00}=\frac{\gamma}{g}とかけることを利用すると、

d\Sigma = dx^1\cdots dx^{D-1} \sqrt{-g^{00}}\sqrt{-g}

さらに、g^{\mu\nu}n_\mu n_\nu=n^0 n_0=g^{00}(n_0)^2=-1となることを用いて、

d\Sigma =n^0 dx^1\cdots dx^{D-1} \sqrt{-g}

=n^0 (d^{D-1}x)_0\sqrt{-g}

=n^\mu (d^{D-1}x)_\mu \sqrt{-g}

となります。このような時間一定面で考えるというのは、相対論的な表式としては美しくないように思えますが、実は重要な考え方で、ハミルトニアンを考えることができます。次回以降の記事ではそのために必要な時空の分解という概念を解説していきたいと思います。

 

一般的な形

上で求めた式は共変的な式になっているので、時間一定面に限らず一般的にこのような表式で表されます。

d\Sigma=n^\mu d\Sigma_\mu=n^\mu (d^{D-1}x)_\mu \sqrt{-g}